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ハンコ(印鑑)に法的効力はある?契約・実印・押印の意味を司法書士が解説

今回は普段よく目にするハンコ(印鑑)についてのお話をさせていただきます。

1.ハンコと契約の成立の関係性

現在、日本に住んでいる方のほとんどはハンコを所有しているかと思われます。私生活での各種手続きや契約、配達物の受取の時などハンコを使用することがあります。しかし、海外では基本的に契約書等の書面にはサイン(署名)のみでよく、ハンコの文化がある国は、日本以外には中国、韓国、台湾と少数のようです。

ところで、ハンコを押すことにどのような法的効果があるのでしょうか?例えば、契約をするときには、契約書にハンコを押さないと契約の効力が発生しないのでしょうか?

 

この点について民法第522条は、以下のように規定しています。

1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

 

上記のとおり、原則として契約は、契約書に署名又は押印をする必要はなく、申し入れの意思表示と相手方の承諾のみで成立し、口約束のみでも成立するのです。ただ、それだと後々トラブルが生じたときなどに『言った』『言わない』の水掛け論になることが容易に想像できますよね。そのため、契約をする場合は、契約内容を明らかにして資料として残すため、通常は契約書を作成する必要があると考えていいでしょう。

 

それでは、契約書に署名又は押印をしたけど、契約内容については『よく読んでいなかったので契約は無効だ』と後になって主張することはできるのでしょうか?

 

これについて民事訴訟法第228条4項は、私文書の成立について、以下のように規定しています。

私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

 

契約内容について民事裁判で争う場合、契約が有効だと訴える側がその契約の成立を立証をする必要があります。ですが、上記の条文は、契約書に署名又は押印があれば契約内容全体について、真正に成立したものと推定するとしたものであり、その場合、逆に訴えられた側が契約の無効を反証しなければ裁判で敗訴することになります。

2.法令上押印が求められているケース

前述のとおり、契約の成立と署名又は押印とは直接関係がありません。

しかし、法令上、押印を求められる場合もあります。

たとえば、自筆証書遺言を作成する場合です。民法第968条1項は以下のように規定しております。

 

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

このように自筆証書遺言には必ず押印をしなければなりません。(その他の方式を含む)遺言のほかに民法においては、『事業にかかる債務についての保証契約(第465条の6の2項)』において、保証人となる者の押印が必要であることが明記されています。

その他、司法書士が業務上関わる手続きとしましては、以下のケースで不動産登記令、会社法、商業登記規則により押印を要します。

◇不動産登記手続

・不動産の売主・贈与者や担保権や用益権の設定者など

・第三者の許可、同意又は承諾書(取締役会議事録など)

・相続を証する情報(遺産分割協議書)

◇商業登記手続

・会社設立における定款

・取締役会・監査役会・監査等委員会・指名委員会等の議事録

・取締役・代表取締役の就任承諾書

 

3.実印と法的効力について

2で法令で押印を要するケースを紹介しましたが、多くの場合、その印鑑は実印であることを要します。実印とは市区長村の役所に印鑑登録をしているハンコのことです。実印を要する場合は、基本的に印鑑証明書とセットで利用されます。

 

さて、これらのケースで実印での押印を要するのはなぜでしょうか。それは、押印された文書が本人の意思により作成されたことを担保するためです。

前述の1でお話しさせていただいたとおり民事訴訟法第228条4項は『私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。』と規定しております。ですが、この押印された印影が実印登録されたものではなく、そこらで売っている三文判であれば、だれでも簡単に押印できますよね。しかし、これが実印であればどうでしょうか。判例によると私文書そのものが真正と推定されるだけでなく、『本人の意思により押印されたことが推定される』とされています。このように実印が押された文書は強力な証拠能力を有します。


4.まだ、実印登録をされていない方へ

私が実印登録をしたのは、30代前半のころで、遺産分割協議書に押印が必要だったからと記憶しています。実印登録は平日に役所に行く必要がありますし、印鑑の作成も日数がかかる場合もあります。もし、このメルマガをご覧になられている方で、実印登録をされていない方がおられましたら、時間に余裕がある時に実印登録をしてみてはいかがでしょうか?なお、未成年の場合は、基本的に親権者である法定代理人が子の代わりに契約をすることになるので、実印を要する機会は少ないと思われますが、未成年であっても15才以上から印鑑登録をすることができるようです。

さて、ここからは、私の主観になるのですが、実印登録されるハンコについては、選ばない方がいいと思われるハンコについてお話します。

 

①100円ショップ等で売っているハンコ(いわゆる三文判)

一定のサイズに収まるこれらのハンコであれば三文判でも印鑑登録は可能です。しかしながら、三文判の印影はよく似たものが多く他のハンコと見分けがつきにくくなりやすいです。実印が必要な時に間違って実印ではない印鑑を持ってこられるお客様を見かけますが、この三文判のケースが多いように思います。

 

②夫婦で同じハンコ

前述のとおり、実印での押印は契約書等が本人の意思により作成されたことを担保することが目的です。夫婦であっても契約者は個人となるので、別々のハンコで登録されることが望ましいと思われます。住宅ローンをペアローンで借入される場合に金融機関から実印の変更を求められる可能性があります。

 

③極端に短いハンコ

これについては本当に私の個人的な意見になりますが、ハンコを押す場合、印鑑の上部に人差し指の付け根あたりをあてて押すと力が入りやすいです。ハンコの長さが極端に短いとこの持ち方をし難く綺麗に押すことが難しく感じます。ハンコを作る場合は長さが5センチ以上のものを購入された方が使いやすいかと思います。



5.今後のハンコの利用頻度について

現在、国の方針により脱ハンコへの取り組みが進められているようです。実際、役所での手続きにおいて押印を求められることはほとんどなくなってきているように思われます。また、ペーパーレス化が進むことによって書面による契約等も減っていき、電子署名に置き換わることで、今後ハンコが必要な機会が減っていくことは確実となるでしょう。

ですが、私が初めて自分のハンコを持った時はなんとなく大人に近づいた気がしてうれしかった記憶が残っており、個人的にはこれからもハンコの文化が残ってほしいと思っています。

 

以上、ハンコ(印鑑)についてのお話でした。近年はインターネットやAIの進化により、専門的な知識や情報でさえ誰もが簡単に得られるようになりましたが、これからも実務を通じて肌で感じた経験から、皆さまにお役に立ちそうな知識や情報を提供出来ればと幸いと考えております。今後ともC-firstグループをよろしくお願いします。

この記事を担当した専門家

司法書士法人C-first

代表社員

山内 浩

保有資格

代表社員司法書士 家族信託専門士

専門分野

家族信託 相続 遺言 生前対策

経歴

司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。


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