遺産の調査方法|不動産・預金・借金を基礎から整理する手順
相続手続きを進める上で最も大切なのは、故人の財産を正確に把握することです。プラスの財産(不動産・預金・株式・保険金など)だけでなく、マイナスの財産(借金など)も調べる必要があります。
財産調査は、遺産分割協議や相続税申告、さらには相続放棄や限定承認の判断材料にもなる重要な作業です。ここでは、代表的な調査方法を網羅的にご紹介します。
プラスの財産の調査方法について
① 不動産調査(名寄帳の請求)
・名寄帳とは
故人が所有していた不動産を一覧で確認できる帳票。固定資産税課税台帳を基に作成され、市町村が管理しています。課税対象外の不動産(共有持分・山林・農地など)も記載されていることがあり、不動産の漏れを防ぐために必須の資料です。
・請求できる人
相続人、納税義務者、法定代理人など。相続人であることを証明するため、戸籍謄本や住民票が必要です。
・申請方法
不動産所在地の市区町村役場で申請
郵送での請求も可能
・注意点
名寄帳は「同じ市町村にある不動産」のみを網羅します。複数の市町村に不動産がある場合は、それぞれ請求が必要です。
② 預貯金口座の照会(残高証明書の請求)
・残高証明書の取得目的
相続税申告のために「死亡日現在の残高」を把握
遺産分割協議の基礎資料
未払いのローンや自動引き落としの確認にも有効
・請求方法
各銀行窓口、郵送、または専用書式をダウンロードして提出。
・注意点
請求から証明書発行まで1〜2週間程度かかる
口座が多数ある場合は負担が大きい
③ 証券保管振替機構(ほふり)への照会
・対象となる財産
上場株式、投資信託など。証券会社を通じて「日本証券保管振替機構(ほふり)」に口座の有無を照会可能です。
・調査方法
証券会社に対し「口座照会」を依頼
証券会社が不明な場合も、ほふりを通じて調査可能
・注意点
非上場株式はほふりの対象外 → 会社に直接確認が必要
相続税評価額の算出には「死亡日」の株価を基準とするため早めの調査が望ましい
④ 生命保険の照会
・生命保険契約照会制度(生命保険協会)
相続人が故人の加入していた生命保険を一括で調べられる制度。
・確認できる内容
保険会社名
契約の有無
・注意点
生命保険金は「受取人固有の財産」となり、遺産分割の対象外。ただし、相続税の計算に含まれる場合があるため要注意。
マイナスの財産の調査方法について
⑤ マイナスの財産の調査(負債・債務)
・主なマイナス財産
銀行や消費者金融からの借入
住宅ローン、自動車ローン
クレジットカードの未払い
税金や社会保険料の滞納
・調査方法
通帳や郵便物、カード明細で確認
信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に照会
金融機関からの督促状や借入契約書を確認
・注意点 借金が多い場合、相続放棄や限定承認を検討する必要あり
相続放棄は原則として「相続開始から3か月以内」に家庭裁判所で手続きする必要がある
まとめ
上記の手続きの中には、必要書類が煩雑で時間がかかる手続きもあり、さらに相続放棄の期限(3ヵ月以内)を考慮すると故人の死亡後すぐに動き始めなければならない場合もあります。故人の財産の調査方法についてご不明点がありましたら、ぜひ一度シーファーストヘご相談ください。
この記事を担当した専門家

司法書士法人C-first
行政書士
鈴木 塁
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 家族信託
- 経歴
大学卒業後、東京のホテルに就職し、その後、行政書士法人での勤務を経てc-firstに勤務。元バスケ部でその長身から相続業務をパワフルにこなす。