自作した自筆遺言では不安…安心できる遺言を専門家と作ったケース
登場人物
相談者
Aさん(遺言の作成をご希望)
相続人
兄弟・甥・姪 複数名(推定相続人とならない方を含む)
相談内容
Aさん(85歳・女性)は、配偶者や子どもに先立たれ、相続人として兄弟や甥・姪が複数人いる状態でした。
「兄弟や甥・姪の中に思い入れが強い人もいる一方で、正直あまり交流がない人もいる。かといって血のつながりがある以上、全く遺産を渡さないのも気が引ける…」と、迷いながらここ10年ほど、自筆で遺言を何度も書き直してきたそうです。
しかし、85歳を過ぎ、兄弟も自分もこれから先どうなるか分からないという不安から、公正証書遺言できちんと意向を残しておきたいと考え、当相談窓口にご相談にいらっしゃいました。
Aさんが所有している財産は、預貯金のほか複数の不動産がありました。
また、甥姪の中には、推定相続人(もし今亡くなった場合に法定相続人となる人)にあたらない方もいらっしゃいました。
この場合、相続の手続きだけでなく、少し複雑な遺贈という手続きも必要となります。
Aさんご自身も「手続きがややこしくなってしまうのではないか…」とご不安をお持ちで、どのように遺産を分配したらいいのか分からずに困っておられました。
当事務所のアドバイス
1. 公正証書遺言の作成をおすすめ
自筆証書遺言は形式等の不備により無効となってしまうリスクが高く、せっかく遺言を作成するなら、より遺言内容の実現が確実な公正証書遺言がおすすめです。
公正証書遺言には下記のようなメリットがあります。
・家庭裁判所での検認手続が不要
(但し、自筆証書遺言でも法務局の預かり制度を利用すれば検認手続不要となります)
・公証役場に原本が保管されるため、
他者による遺言内容の偽造、変造、隠匿を防ぐことができる
・公証人が遺言者の意向を確認のうえ、意向を正確に公正証書として作成するため、
内容の解釈等について、後々相続人間で争いが起きる可能性が低くなる
2. 遺言執行者の指定が必須
遺言執行者とは、遺言の内容を実行する役割を担う人です。
相続・遺贈の手続きを相続人に代わって一括して行うため、相続人や受遺者がスムーズに財産を受け取れるようになります。
Aさんの場合、推定相続人以外の甥・姪へ「遺贈」する部分が含まれます。
公正証書で遺言を作成しても、その後の手続き(不動産の名義変更や預貯金の解約・分配等)を円滑に進めるには、遺言執行者を遺言書で指定しておくことが望ましいとご案内しました。
もし、遺言執行者がいない場合、遺贈義務者として法定相続人全員の協力が必要となってしまい、遺言があってもスムーズな手続ができない事態となってしまします。
また、遺言執行者の指定がない遺言でも、遺言者の亡き後、裁判所に遺言執行者選任の申立てを行うことができますが、これにも手間と時間がかかるため、遺言作成時にあらかじめ指定しておくのが最善です。
3. 気持ちの整理のサポート
Aさんのように「誰にどのくらいあげるのか」を迷われている方は多いです。
遺言を作成するには、法律的な部分だけでなく、ご自身の気持ちを丁寧に整理することが重要だとお伝えし、じっくりとヒアリングを重ねました。
提案したメニュー
遺言コンサルティングサポート
財産調査、遺言案文作成、公証人との連絡・日程調整、証人手配など、遺言書作成に必要な一連のサポートを行います。
Aさんには「何度でも納得いくまで打ち合わせを重ねられる」点を高く評価いただき、私どもに依頼されることを決めてくださいました。
解決までの流れ
1. ご本人の気持ちの整理
まずは、Aさんの思い入れがある兄弟や甥・姪、そうでない方への対応など、現時点でのご希望を徹底的にヒアリング。
しかし「やっぱり血のつながりがある以上、平等に分けるべきか…」「この人には多めにあげたい気持ちもある…」というお気持ちが揺れ動き、何度か内容を見直しながら整理を行いました。
2. 財産の調査・遺言案文の作成
不動産や預貯金、動産などすべての財産をリスト化し、誰に何をどのくらい渡すのかを決定するための案文を作成しました。
Aさんの迷いが大きく、3~4回ほど遺言案文を練り直しながら、ご納得のいく内容になるよう丁寧に進めました。
3. 公証役場での公正証書遺言の作成
遺言の内容が固まってから、公証役場や公証人と打ち合わせをし、必要書類を整備。
Aさんには公証役場にご本人が足を運んでいただき、遺言内容を読み合わせ・最終確認を行ってサインと押印をしました。
約8カ月かけて、ようやくAさんが納得できる公正証書遺言が完成しました。
4. 遺言執行者の指定
遺言書の中で、遺言執行者として当事務所を指名していただきました。
将来、Aさんがお亡くなりになったとき、当事務所が遺言どおりに財産を分配する手続き等をまとめて行います。
まとめ
今回の事例では、自筆証書遺言を何度も書き直してきたAさんが、公正証書遺言を作成することで不安を解消できました。
複数の兄弟や甥・姪がいるケースでも、適切に遺言執行者を指定すれば、将来の相続手続きをスムーズに進めることができます。
同じ状況の方へひとこと
• 遺言には書き換え(撤回)や追加が可能です。
一度作成したからといって、絶対に内容を変更できないわけではありません。
• 想いを整理して文章化するには時間がかかることもありますが、
専門家がしっかりサポートしますのでご安心ください。
• 相続人が兄弟や甥・姪にまで広がると、意外なところでトラブルが生じたり、
手続きが煩雑化する可能性があるため、早めの備えをおすすめします。
将来に向けて確実な遺言を残したい方、自筆証書遺言をすでに作成していて内容を変更したい方などは、ぜひC-first相続相談窓口にご相談ください。
私どもは財産の調査や遺言案文の作成、公正証書遺言の手続きまで、一貫してサポートいたします。
この記事を担当した専門家

司法書士法人C-first
司法書士
江邉 慶子
- 保有資格
司法書士 相続アドバイザー 2級FP技能士 行政書士 宅建士
- 専門分野
相続 遺言 生前対策 家族信託
- 経歴
大学卒業後、不動産会社に勤務。自身の祖父の相続経験から「相続争いになる人を減らしたい」という想いがあり司法書士試験にチャレンジし、合格。平成27年7月から「司法書士法人C-first」に入所。入所時から相続を担当し、相談件数400件以上。セミナー講師も務め、生前対策の大切さを伝える。