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遺贈と相続の違いを考慮した遺言書をスムーズに執行したケース

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遺言コンサルティングサポート
遺言執行

登場人物

相談者
Aさん

遺言者
Bさん

相続人
Aさん

その他
Bさんの甥姪約10名

相談内容

Aさんは叔母であるBさんの介護をしていてBさんから全財産をもらう事になったとの事で遺言のご相談に来られました。
Bさんにはお子様がいらっしゃらないため遺言を書かなければBさんの兄弟が相続人となります。
相続関係が少し難解で説明させて頂きますと、AさんはBさんから見て又姪(姪の娘)にあたるのですが、Aさんは祖母と養子縁組としたため実母とは兄弟の関係に、Bさんとは叔母と姪の関係になっていました。

そしてBさんのご兄弟は全員がお亡くなりで、各兄弟の子供達であるBさんの甥姪はAさんを含め10名近くいらっしゃいました。
もし遺言書を書かないのであればこの方々全員がBさんの相続人となります。
そこでBさんはAさんに全財産を遺したいとの意向があるため遺言書の作成を決意されたのでした。
そこで弊所からは遺言を含めた生前対策の計画を弊社から提案して作成まで行う「遺言コンサルティングサポート」をオススメさせて頂きました。

解決までの流れ

早速、遺言書の案文の作成に取り掛かりましたが、今回は第三順位(兄弟甥姪)の相続で遺留分の事を考える必要がありませんし、全財産をAさんに譲るという方針も明快だったため、内容はそれほど難しくなりません。
公証役場に連絡を取り、案文を作ってBさん、公証役場それぞれと打ち合わせをして、公証役場に集まる日を決め、当法人からスタッフ2名を証人として公正証書遺言を正本するという流れで、トラブルもなくスムーズに進みました。
遺言書を作る時に注意するポイントはいくつかありますが、遺言執行者を指定しておくのもその一つです。
遺言書の効力が発生するとき、すなわちBさんがお亡くなりになってしまった後に遺言の内容を実現するためには様々な手続きが必要です。
その手続きをする人が執行者で、これを誰にするか遺言書で指定する事ができます。
今回は当法人を遺言執行者に指定して頂き無事に公正証書遺言を作成する事ができました。

Bさんの他界

公正証書遺言を作成してからしばらく経ったある日、Bさんがお亡くなりになってしまいました。
そしてAさんから連絡を受け私たちは早速遺言の執行に取り掛かかりました。

まず行ったのは甥姪のみなさまへ弊所が執行者に就任したという通知を送る事です。
これは令和元年7月1日に民法が改正され、遺言執行者は就任後に、その旨をすべての相続人に通知することを義務づけられているためです。
全員に郵送によってその旨を通知した所、そのうちの1通が所在不明で届かず、返送されてしまいました。
もし連絡が付かない相続人がいる場合、遺言書がなければこの方の行方を追跡し、それでもどうしても連絡が付かない時は失踪宣告や不在者財産管理人の選任などの煩雑な手続きが必要になってしまいます。
しかし、今回は遺言書があるため行方不明者がいたとしても特別な手続きなく手続きを進めることができます。
預貯金の解約や不動産の名義変更などは公正証書遺言を用いてスムーズに進める事ができました。

ここで一つ注意しなければならない事があります。

遺贈と相続

遺言書の内容の話に戻りますが、Aさんが養子縁組をしていなければ相続人にはあたらないので遺言書の内容はAさんに「遺贈する」他ないのですが、養子縁組によってBさんの姪という立場ですので「相続させる」事が可能です。

「遺贈」と「相続」は似ていますが実は相続発生後の手続きが大きく変わります。
この二つは多くの場合で「相続」の方がメリットは多いのですが、今回は様々な可能性を考慮して「相続」ではなく「遺贈」する事にしました。

しかし、今回のケースですと不動産の名義変更の申請をするとき、遺言の内容が「相続」であればAさんの単独で手続きを進めることができるのですが、「遺贈」だと遺言執行者を指定していなければ法定相続人全員の印鑑証明書が必要になるため、甥姪全員の協力が必要になってしまいます。
これでは遺言書を作る目的の一つである「相続争いの防止」としての意味が無くなってしまいますし、甥姪のうち連絡が付かなかった方を探す必要もでてきます。
しかし、今回は遺言執行者を当法人が務めますので問題なく手続きを進める事ができました。

もしBさんが遺言で執行者を指定しない場合はBさんがお亡くなりになった後にAさんから裁判所に申立ててAさん本人、又は弊所を執行者にするといった事も可能なのですが、それでも裁判所への申立てをするという手続きが増えてしまいます。

ポイント

今回は相続人が10名近い大人数で、養子縁組の事もあり相続関係が非常に複雑で、なおかつ連絡が付かない人がいる、遺贈の事など様々な事がありましたが、このような場合でも公正証書遺言を作り遺言執行者を指定しておけばスムーズに手続きを進めることができます。
遺言をお考えの方はぜひ執行者を指定した公正証書遺言をご検討ください。

この記事を担当した専門家

司法書士法人C-first

代表社員

山内 浩

保有資格

代表社員司法書士 家族信託専門士

専門分野

家族信託 相続 遺言 生前対策

経歴

司法書士法人C-firstの代表を務める。平成6年4月に貝塚市にて開業、平成25年4月には合併を経て事務所名をC-firstに改名。高齢者の生前対策について新しい財産管理承継ツールである家族信託などを活用して、高齢者の生前対策に最適なプランを提供する。


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